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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

沼だらけ

昨日は両親が遊びに来たので三人で京都府立植物園へ行った。

七月のショクダイオオコンニャク開花の時に一度訪れていて、今年二度目。

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京都府立植物園は、行ったことのある人は知っていると思うが、入園料がとても安い。一般二百円。温室観覧料は別に二百円かかって、共通券でも四百円。安さのわりに園内はたいへん広い。ぼけっと散策するだけなら小一時間もあれば良いだろうが、立ち止まって植物をじっくり眺めたり説明の札を読んだりしたいなら一日では足りないはずだ。そして園内には見たこともない草花や樹や、人の手が隅々にまで入った庭園がぼんぼん並んでいて、どうしたって数メートルおきに立ち止まることになる。この日記を書くために今検索したら入園のみの年間パスポートは一般千円だった。市民としてはありがたいけれどはっきり言って狂っている。どこかの高校の文化祭実行委員会が値段を決めてるのだろうか?

 

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トラノオにたかっていたアブのケツ。寒くなったきたけれどここには花がたくさんあるので、蝶やアブ、ミツバチなどが越冬チャンスを賭けてたくさん飛来していた。

 

適当に歩いているとバラ園にたどり着き、「バラね、沼らしいよね」と思う。趣味としてハマると生活に影響が出て一生抜け出せなくなるほどの奥深さを持った分野、という意味での"沼"だ。母はバラが好きなのでゆっくりめに観る。秋バラが咲いていて匂いをかぐのが楽しい。園の半分ほどをぐるっと巡る。「シャクナゲか、花咲いてないから良さがよくわからんけど、こんなに品種があるってことは沼なのね」「桜もたくさん種類があるね、春に来たらすごいだろうな」「ダリアってはっきりしたイメージなかったけどゴージャスだし色んな色があっていいね、沼だね」そうこうしているとあっという間にお昼になって一旦レストランへ行く(当日中は再入場可)。植物園に戻る。「ああ、椿だね、佐々木倫子の『林檎でダイエット』に出てきたけど椿も沼らしいね」「盆栽か、人に与えられた寿命じゃ足りん感じがザ・園芸沼って感じだね」いよいよ温室へ。「ジャングル室は正直耳慣れない学名ばかりでよくわからない、しかし似た雰囲気の植物ばかり植えられていて"沼の磁場"を感じる」「サボテンだ多肉植物だ、父がドハマリして手作りのミニ温室が台風で飛ばされそうになった時は大変だった」「この温室には隙あらばビカクシダを植えようとしているスタッフがおるな。沼なんだろうな」「ランもザ・沼だな、ネロ・ウルフのイメージしかないけど」

だんだん疲れてきた。沼が多すぎる。園芸という営み、物量と情報量と熱量とかけられた時間が過剰だ。温室を見終わったらもう十六時前になっていて、帰りは通らなかった道を行こうよと迂回したら、品種名の下に"江戸系""肥後系""伊勢系"など書かれた札を差した鉢がびっしり並んだハナショウブ園が出てきていよいよ絶句してしまった。この日八キロ近く歩いて疲れたんだけど、帰宅してすぐ気絶するように昼寝してしまったのは、展示された植物にまとわりついている人の気配に気疲れしたのもあるかもしれない。

余談ですが珍種貴種で満ちている(であろう)ラン室の最後に、開店祝いで贈られるような、いかにも工場的に栽培されていそうな平凡なコチョウランの鉢が置かれていて、皮肉っぽいユーモアを感じました。

 

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七月に見たショクダイオオコンニャクはまっぷたつに割られ、それぞれ押し花標本にされていた。見ていたら後ろから「ほらほら!」と知らないおじさんが話しかけてきて、ショクダイオオコンニャクの花が写ったデジカメを見せてきたので、「いいですね、私も見に行ったんですよ~」と返したら「なんや見たんか~」と言って去っていった。帰り道に両親と「おじさん面白かったね」「えっ、あれは職員さんちゃうの」「いや、あれはただの植物大好きおじさん」という会話をした。あの人もまた沼にはまった人なのだろうな。

 

マールブランシュでケーキを買ってもらい、フランス産栗ペーストを使用した「モンブラン」と「丹波栗のモンブラン」を同居人と半分ずつ食べた。食べる前は「丹波栗とかいってありがたがられとるけどそんなに違うんですかねえ。食べ比べによってその実力が白日の下に」などと言って丹波栗を煽っていたが、食べてみるとぜんぜん違った。普通のモンブランは洋酒とクリームが多めで「モンブラン食べてるな」って感じ。丹波栗の方は栗の味と香りが強く「栗を加熱して裏ごしし、バターや砂糖を混ぜて作ったクリームを使用した生菓子を食べているな」って感じ。栗きんとんっぽさもあった。単純に栗の比率が高いせいかもしれないが、前言を撤回し、丹波栗に謝罪した。