点取日記 38 ドズボラの正月
あけましておめでとうございました。
ひさびさにログインしたら最後に更新したのが昨年9月21日。そんなにほっぽってたのかと驚いた。
去年は9月末にブンゲイファイトクラブへの繰り上げ出場が決まり、11月後半まで1作品たった6枚とはいえ必死で読んだり書いたりする生活をしていた。12月には打ち上げに参加するため東京にも行った。その節はありがとうございました。さまざまな節。
年が明けてからEvernoteで日記つけるのを3年ぶりに再開した。ひとまず11日続いたのでそれを抜粋してまとめるような形でブログを更新している。
だいたい日記でもブログでも、広く読まれるものではないのに勝手に面白さのハードルを上げようとして強迫観念にかられ1日数時間とかかけるようになり自滅、をくり返すので、なるべくそうならないように淡々と続けたい。
年明けてから自分の中で熱かったトピックは、
・「2020年にしたい100のこと」リストを作ってみた
・朗読がむずかしい
・『映像研には手を出すな!』のアニメが最高
の3つです。
「2020年にしたい100のこと」リストを作ってみた
いやこれはなんかseramayo.comさんとかですね、リアル知人とかTwitterで流れてきた記事とかですね、けっこうみんなやってるんで、やったらいいことあんのかな~と思ってですね、まあやらないよりはやった方がいいでしょうからね、といきなり弁解から入ってしまうことからわかるように、自分と相性の悪い行いだと自覚はしている。
考えてもみてほしいんだけど、ドがつくほどズボラな人間が(ドズボラ、って、怪獣か武装組織みたいな響きだな、そういえば正月早々えらいことが起きてしまったな)、よりよい自分であるためのTo doを100も思いつくだけで相当たいへんだ。だからまだリストは100に達していない。88で止まっている。
みんなみたいにずらっと100並べて発表するみたいなこともしない。なぜならレベルが低すぎて見せるのが恥ずかしいから。例をあげると「23.床に物を置きっぱなしにしない」「44.お菓子を食べすぎない」こういうレベルです。こういうのが88個あります。
今のところTodoistと組み合わせて、部屋の秩序を維持するルーチンを継続するのと、気分が落ち込んだ時に眺めてふむふむそうであったと冷静さを取り戻すのに役立てている。
朗読がむずかしい
2月15日(土)にtoi books さんの「第4回 北野勇作朗読会」に出ることが決まり(予約受付中来てね!!!)、ちょこっと朗読もさせてもらうので目下自主練中である。
今はおもに仕事の文章を書くのに疲れたタイミングで、気分転換もかねて『kaze no tanbun 特別ではない一日』を1編ずつ朗読している。
ひとりでやってるから音読なのかな、自分を楽しませるために工夫しながら読んでるから朗読でいいと思うんだけど、他人の文章を読むのってけっこうむずかしい。
(以下ネタバレしていますが、)
朗読の難しさを感じたのは、たとえば岸本佐知子の小説「年金生活」。一度黙読して内容を把握していたにもかかわらず、私はこれを朗読しながら後半で泣いてしまった。
エッセイにも通じる岸本佐知子の文体で、ある老夫婦の年金と<ねんきん>が淡々飄々と語られていく。なんにでも変化してなんでも直してくれる<ねんきん>の不穏な活躍ぶりは痛快で、前半はむしろ笑いをこらえるのがたいへんなくらいだ。
けれども、<ねんきん>が数十年前に事故で亡くなった娘の形をつくり出すくだりに差しかかると、感の極まりが止められずに、どぼどぼと泣いてしまうのである。
すると当然声はふるえるし、かすれて途切れるし、鼻水が出て鼻声になるし、目がかすんで文字が追えなくなる。
それだけ主人公に移入できているとも言えるけれど、人に聴かせる朗読としてはやはり具合が悪い。
朗読者があまりにテキストにのめり込んでいると、聴いている方は置いていかれる気もするし。むずかしい。
日和聡子「お迎え」もまた違ったむずかしさだった。
ある日のある幼稚園の、親がなかなかお迎えに来ないふたりの園児と、その子らの面倒を見ようとする先生のやりとりが描かれているのだけど、作中で先生は園児たちに紙芝居の読み聞かせをするのだ。
つまりすでに朗読をしているのに、さらに朗読をしなければならない……のが、案外むずかしい。もちろん大人がおもに大人に向かって朗読するのと、幼稚園の先生が小さな子供に朗読するのでは、ずいぶん勝手が違う。油断すると、地の文で読み聞かせ風の抑揚をつけてしまったりするのでたいへんだ。
さらに言えば、私は仕事でときどき幼稚園に出入りしているので、幼稚園の先生が普段から園児にとって可聴性(という言葉はあるんだろうか)の高い話し方をしているのも知っている。言葉の区切り方や語順や抑揚がかなり独特に洗練されていて、あれは一種の職人技だと思う。現場に行くと毎回拍手したくなる。
というわけで、理想的には高速でトーンを切り替えながら、地の文/先生から園児への台詞/園児のあどけない台詞/紙芝居の読み聞かせ/先生から先生への(大人同士の)台詞、を渡り歩かねばならない。む、むずかしい……。
これはあながち私だけのこだわりではなくて、テキストにはそれら音の違いがはっきり示されている。園児の台詞はひらがなで書かれているし、園児が理解できないまま発した言葉はカタカナだし、読み聞かせの場面は絵本風の文節分かち書きだ。先生が園児に語りかける台詞になると読点が増え、一音一音はっきり発音する言葉はナカグロで強調される。
すさまじく耳の良い小説だ。だからたとえ自主練でも朗読するなら応えたいのだが、本当にむずかしい……。
それだけに、地の文だけが置かれた最終ページは、突然それら音のくびきから解放されたような感覚があって、とても気持ちがよかった。
音をともなう言葉は基本的に、個々人同士の関係を反映するし、個から別の個へ影響をおよぼすために使われる。そこから逃げ出す最終ページ。
朗読しなければこういうことに気がつかなかったと思うから、これはよかった。
『映像研には手を出すな!』のアニメが最高
みなさんはNHKで放映された『映像研には手を出すな!』のアニメ第1話をご覧になりましたか。見てください。高校生の女の子三人組がアニメを作る話です。明日(日曜)のド深夜に第2話をやります。見て!!
もともと1巻から原作を追っていて、アニメ化のニュースを知ってできんのかいと思ったけれども、監督が湯浅政明と聞いた時点でいっさいの心配が霧消した。『カイバ』も『四畳半神話大系』も『ピンポン THE ANIMATION』も大好きだし。
でもほんとにあんなレベルでアニメ化するとは思わないじゃないですか。最高最高。ありがとう。
アニメそんなに見なくて年2本も見れば多い方なんだけれども、ひさびさにアニメをコマ送りで見ました。「アニメーション」だ!!OP映像もこの1週間で数え切れないほど視聴している。
細部がめちゃくちゃすごいんですよ。カイリー号を手で押す水崎氏の、作業着とスカートのはためきで泣くほど感動してしまう。風が吹いてる!
演技もめちゃくちゃいい。浅草氏の「ッ 水崎氏も、絵、描くんすか? アハ」の半角では足りない0.25角くらいの言いよどみとか。
原作からの改変ポイントがことごとくはまってて、とくに金森氏の「水崎さんと友達になってくださいよ」の使いどころと、夕映えの窓ガラスを撮影台がわりにしたのは天才天才大喝采でした。
あとみんな大好き金森氏が私も大好きなので、金森氏のカットが美しいだけで100億点加点してしまう。牛乳ぐびぐび飲んでスヤスヤ寝てにょきにょき育ちましたという感じで、それでいてあの顔と性格なのが本当に良いですね。
アニメオリジナルの場面で、誰にも気づかれないまま暴れる洗濯機を押さえて作動させる金森氏、ともすればただのエネルギーの暴発で終わってしまうクリエイターふたりを抱えたプロデューサーとしての今後を示唆していて最高でした。
怒ると眉間まわりに容赦なく皺が寄るところも大好きなのでアニメにも期待しています。しかしどこまでやるんかね。風邪森とか、ちび森とかやるんかね……死んでしまう……。
【読んだ本と漫画】
雛倉さりえ『呼吸する町』
Qへい『Rebirth』
神沢利子『銀のほのおの国』(再読)
斉藤倫『レディオ ワン』
大童澄瞳『映像研には手を出すな!』1~4巻(再読)
北野勇作『恐怖』
【ドラマ】
刑事コロンボ「逆転の構図」
【良かった音楽】
折坂悠太「トーチ」
chelmico「Easy Breezy」(OPサイズ)
「お前のことならなんでも知っている 8点」
2020年最初のおみくじ的なものが点取り占いになってしまった。
この内容で8点の高得点なの意外だな。でもまあまあよさそう。
そういえば、今日誕生日を迎えました。コメントとかプレゼントはいらないけど、よかったら心の中でイェーイと唱えてください。イェーイ。