点取日記 18 居候の正体
昨日の日記でも書いたように今の部屋は虫がよく出る。なかでも今の季節多いのが蚊だ。かゆみにたまりかねてムヒを買い、数えながら塗ってみたら11箇所も虫刺されがあった。
そうしている間にも耳元でプンという羽音がして、太ももに1匹の蚊がとまる。
とっさにぶっ叩いて息の根をとめた。
蚊はぺちゃんこになって肌にへばりつく。窓は開けていないのに、どこからか入り込んで部屋で待機していたみたいだ。
それでふと思い出した。この部屋の居候のことである。
居候というかそいつは蜘蛛で、気がついたらすでに部屋の中にいたのだ。台所のガスコンロの向こう側、空中にホコリのようなものが浮かんでいて、目をこらしてよく見ると小さな蜘蛛が巣をかけていた。
本当に小さくてお腹は灰色のような茶色のようなまだら模様、形のはっきりしない巣をかけている。なんとも地味な蜘蛛だ。ヒメグモの仲間ではないかと思うがくわしくはわからない。
叩いた蚊の体を指でつまんで台所へ行き、小さな居候の巣に引っかかるように放り込んでやった。
もっともどちらが先に入居したのかわからないから、ひょっとすると私が後からやってきた居候なのかもしれない。だとするとまあ、遅めの引越し蕎麦みたいなものだ。
蚊の体は巣の左隅にひっかかってぶら下がった。
ある虫は殺して別の虫に餌をやるのはえこひいきと言われても仕方がないが、片や2桁の虫刺されをつくって片やそれをやっつけてくれるというのだから、扱いに差が出るのが情だと思う。
いくつか用事を済ませてもう一度台所を見に行くと、蜘蛛が巣の真ん中で蚊の体をがっしりと抱え込んでいた。
小さすぎてよく見えないがチクチクと細かく揺れているのはかじっているらしい。
結局何の種類かわからないけれど居候とはうまくやっていけそうだ。
嬉しくてまた巣をのぞき込んだら、すぐ近くにもう1匹、さらに小さな蜘蛛がいるのに気がついた。
ホコリのような蜘蛛に塵のような蜘蛛が近づこうと一進一退している。なんだかお腹の雰囲気が似ていて、オスの蜘蛛ではないかと思った。蜘蛛には雌雄で体格差があり、メスの方が大きいものもいると聞いた気がする。
だとすれば2匹はつがい、またはつがい候補だ。大きい方は気づく様子もなくチクチクと蚊をかじり続けているが、台所の隅でこんなドラマが展開されているとは。
やっぱり私の方が居候かもしれない。
「足でけるとはけしからん 4点」
足といえば駅までの道のりを毎日小一時間かけて往復していたら小指に豆ができてしまった。
かなり早足で歩くせいで指が負けたみたいだ
早く自転車を買わなくちゃ。