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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

不完全な握手

折坂悠太のライブを見に行ったらその日の夜の夢に折坂悠太が出てきたので笑ってしまった。私の脳みそは時々ものすごく単純だ。こういう夢だった。

夢には有名な歌手が二人出てきたが、どちらもまだ小さなライブハウスで活動している設定で、ステージの後に客が話しかけやすい雰囲気。中村佳穂さんのライブを聴きに行く。吹き抜けの明るい建物の中、淡い色味の布がカラフルに張り巡らされていて入り組んだ蜘蛛の巣のよう。その中心で中村さんは一人がけのソファに腰掛け、傍らに立つ他の客と談笑している。ソファの背もたれは高く両脇に肘置きがあり、きれいな布で覆われていて王様の椅子みたいだ。中村さんが布について説明を始めた。会場に張り巡らされた布は中村さんの楽曲をイメージして作られた。ソファにかけてあるのは中でも特別のもので、非常な力作である。誘われるままに近くでよく見てみると、たしかに厚手で織り目に立体感があり、微妙に色彩の異なる糸が複雑に組み合わされていて、手のかかった布であることがわかる。カーテンの布地として販売されることが決まっているのだそうだ。そして中村さんは、この布のことを私の友達である折坂悠太さんに伝えてくれないか、と私の目を見て言う。思いがけず伝言役の命を帯びることになり、私は戸惑いつつも喜んで引き受ける。建物を出て細々としたビルが立ち並ぶ界隈を抜け、折坂さんのいる場所へ向かう。さっきとは打って変わって巨大なスポーツ競技場やホール、公園などが整備された開放的なところだった。ライブ後に知人と雑談していた折坂さんに隙を見て話しかけ、言われたとおりの伝言を伝える。二、三言ぎこちない世間話をしたあと、では帰りますと言うと、ならそこまで、と折坂さんは「心理」のジャケ写みたいな読めない感じの表情で言い、なぜか会場前の広場まで見送ってくれることになる。どちらも手にビニール傘を提げて歩いている。短い雑談の中、内容は忘れてしまったが非常にささいな事柄について意見が深く一致する。別れの間際に名残惜しくなり「握手をしてもいいですか」と訊ねると、折坂さんは無表情のままスッと右手を出してくれる。私は右手に傘を提げていたのでとっさに左手を出してしまい、そのせいでがっしりと手を合わせるのでない、不完全な握手になった。が、嬉しかった。帰り道、大きな公園に作られた人工池の前に差し掛かる。休日なのか人出が多く野良猫もたくさんいる。近くに二匹の野良猫がいて、そのうちのまだ若くて痩せっぽっちで薄汚く不健康な感じの白黒模様がこちらへにじり寄ってこようとしている。嫌だな、と思って傘を前に突き出し、先が当たってしまわないよう注意しながら牽制するが、猫はお構いなしにじりじりと近寄ってくる。一瞬の隙を突いて猫の首あたりに傘の先を向け、持ち手についたボタンを押してノミ取り剤を噴射すると(そういう機能があったのだ)、途端、猫の体の表面に小さなノミが何匹も這い出して、苦しそうにぴんぴんともだえつつ猫の体から落ちていく。だとしても触りたくはないのだが、ノミが落ちてよかったな、と思った。 

目が覚めてから、私はライブでノミを取ってもらったのかもしれないと考えた。

 

今日は遠方で仕事。お腹の調子が悪く、張った感じの続く一日だった。もしかして昨夜のカップ麺とコンビニおにぎりが良くなかったのか。帰りはバスを使わず歩いていくことにし、やっぱりたくさん歩くと調子がいいよな、天気が良くて道はまっすぐ、散歩しか勝たん、などと思いながら歩いていると突如「暗雲」としか形容しようのない雲が現れ、木枯らしとともに雨がびしょびしょ降り始めて一気に気分が盛り下がった。散歩は雨に負ける。しかも駅についた瞬間にパアッと晴れた。ふざけてんのか。モンベルの晴雨兼用折りたたみ傘があって本当に良かった。持ってるのを忘れるくらい小さくて軽いのだ。帰ってから睡眠不足と疲れと胃のもたれにぐったりして嫌な感じの昼寝をしてしまった。夜は手羽元と蕪のお粥を作ってもらって食べた。おいしかった。