点取日記 20 なぞなぞフロム前の人
引っ越して1週間と1日が経った。
部屋に馴染んであらためて思うのだけれど、この部屋にはやたらとフックが多い。
フックというのは金属の一方が壁に固定できるようネジ状になっていて、もう一方が丸やL字型で物が引っ掛けられるようになっている、あのフックだ。
今調べたら洋灯吊りとかひる環とか、あるいは洋折れとかいうらしい。
名前はとにかくそれらフックがこの部屋にはいくつも残されている。つまり前の住人の置き土産だが、私はまだ大半を活用できていない。
なぜかというと、変なところに取り付けられたフックがけっこうあるのだ。
わかりやすいところ、たとえばクロゼットの縁とか台所の洗い場の壁とかにフックがあるのは腑に落ちる。
以前何が吊り下げられていたかわかる気さえするし、私もありがたく鍵や、泡立てネットや、帽子や焼き網なんかを引っ掛けて便利に使っている。
しかしなぜそこに取り付けられたちっともわからないフックもある。ベッド近くの梁に2つ並んでいたり、天井から生えていたりするのだ。
あまりに存在が唐突なので、キノコ類のような迫力を感じる。
どのフックも壁と同じに白い塗料で塗られている。そこには前の住人の明確な意志が感じられる。
前の住人は吊り下げたのだ、フックと重力とを利用して、生活に必要な何かを。
私にはわからない。
頭の中で色んな物をぶら下げてみる。タオルとかお玉とかハンガーとか、時計とか絵画とかホウキとか蚊帳とか。でもまだしっくり来ていない。
フックたちもフックたちで何かを吊り下げられるのを待っている気がする。
いつかわかる日がくるだろうか。
「カサをくるくるまわして目がまわった 2点」
ほんとかしら、カサを回すだけで目がまわるなんて。
今日は忙しくて目のまわるような1日だったよ。