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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

足跡探偵

比叡山に登った。一月頃から軽めの冬山登山がしたいね、比叡山延暦寺でおみくじを引きたいねなどと言っていたのだが、伸び伸びになって二月末になってしまった。

登山はきつかった。なるべく歩くようにはしているが運動らしい運動もしていないから当然だ。一夜明けた今、すでに尻の両脇が痛い。坂を上るとここの筋肉を使うんだなとわかる。

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半分ほど登ったところで雪が増えてきた。春めいた日でふもとはかなり暖かかったのだが、山の上はしっかり積もっていた。道が山の北側に差し掛かるとあたりはすっかり真っ白になった。登山客にはあまり出会わなかったがそれなりにいるようで、道は踏み固められているし足跡もしっかりついている。足跡を見ながら歩くのは面白い。登山靴の跡、ストックの丸い跡、よく見ると犬の足跡もある。どんな犬だろう、雪にはしゃいでいただろうか、むき出しの肉球に雪は冷たくなかったろうか。さらに気をつけていると、山の獣の足跡もかなりの数見つかった。ゆったり歩く鹿の足跡。少し珍しいのはけづめが付いた猪の足跡。獣たちは登山道をおおむね無視して、急斜面を突っ切ったりしている。

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「これはウサギかな?」「ウサギにしては小さくない? ネズミじゃないか」「子ウサギかも」「いやこっちの続きを見て、しっぽの跡がある」などと話すのは、探偵のような気分になって楽しい。まあ、知識があるわけではないので当たっているのかどうかわからないけど。

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これは何かの鳥の足跡。キジか、山鳥かな? と思う。

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倒木をつたって登山道に降りてきたようだ。

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不思議と獣に人気な、やたらに足跡の多い獣道もある。

 

普段雪の少ない地方に住んでいることもあってとても楽しかった。

 

比叡山延暦寺に到着するともう午後遅い時間だった。本当は東塔、西塔、横川と三つのエリアに分かれているのだが、時間がなくて東塔しか見られず。東塔だけでも広くてけっこう見どころが多かった。根本中堂は現在十年間の工事中(平成の大改修)で、二〇二六年までかかるらしい。気の長い話だ。そういうわけで建築物全体は無骨な工事用の建物にすっぽり飲まれていたけれど、工事中の屋根や大改修についての映像などが見られてこれはこれで面白かった。

お目当てだったおみくじだが、東塔にはなんとおみくじがなかった。代わりに献灯のろうそくがいくら、線香がいくら、護摩木がいくら、絵馬がいくらというふうに、奉納するところがたくさんあった。「占いなんかするくらいなら願いごとしてしっかり拝んどきなさい」的な態度を感じる。帰ってから検索したところ横川にはおみくじの元祖とも言われる元三大師みくじというのがあって、しかしそれも予約をして願いや悩みを紙に書いて面談をしておみくじを引くかどうか決めて引いたら解説をしてもらって……という気合の入ったものらしい。年初は普通のおみくじが引けるそうだが、何にせよさすが比叡山延暦寺、ものが違うぜという感じだった。ひと撞五十円の「開運の鐘」で「いい小説が書けますように!」とお願いして鐘を撞いた。

下山してさあ帰ろう、という時にテンを目撃してテンションが上がった。冬毛でふわっふわで、薄いクリーム色で、しっぽの先が白かった。