/* 本文の位置 */ #main { float: left; } /* サイドバーの位置 */ #box2 { float: right; }

蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

点灯式

今日は今シーズン初めて灯油ストーブをつけた。実家では縁がなく、祖父母の家で見かける程度だった灯油ストーブだけれど、引っ越した年にアラジンのブルーフレームを中古で買って以来毎年お世話になっている。ブルーフレームは第一に見た目が可愛く、火をつける時にガッチャンと金属の筒を動かす手応えもいい。天板で芋を焼いたり煮込み料理を作ったりできる。今日は業スーのあらびきフランク(ハーブ)を入れてポトフを作った。

 

当然だが灯油ストーブは灯油を調達してこないといけなくて、この点はちょっと面倒くさい。ガスストーブや電気ストーブならそういう手間はあまりない。ところでこの灯油の調達ということについて最近発見があった。

ここ三年ほど灯油は同居人にバイクで買ってきてもらっている。満タンになった十八リットルのポリタンクは非常に重いからだ。一度自力で歩いてガソリンスタンドへ買いにいったことがあるけれど、元々非力かつ利き手の肩関節の調子が悪く、手はしびれるし肩は抜けそうになるしでえらい目にあった。誇張でなく、帰りは行きの三倍ほど時間がかかった覚えがある。できればもう二度とやりたくない。けれども度々買いにいってもらうのはこれはこれで問題がある。手間をかけて申し訳ないのもあるし、自分で買いに行くのでないとストーブをつけるのもついケチケチして寒さを我慢してしまい、結果布団からなかなか出られない、みたいなことが起きやすい。

 

日中家で過ごしていると灯油のトラックが近づいて遠ざかっていく音が聞こえることがある。「コ・コ・ロ・を・満タンに・コ・ス・モ・せ・き・ゆ」というフレーズが、スピーカーが悪いのかなんなのかあぶくのように聞こえてくる。あのトラックから灯油を買えたらいいだろうなあと、数年前から思ってはいた。同居人に手間をかけなくて済む。ああいう流し売りって売りに来る曜日や時間帯は決まっているのだろうか。やっぱり現金払いのみだろうか。ガソリンスタンドで買うより多少高いのだろうけど、それは仕方がないだろうな。音楽が聞こえてから慌ててポリタンクと財布をひっつかんで家の外へ出たこともある。でも、方角がわからなくていつもトラックを逃してしまうのだった。

灯油のトラックから買うことはなく三年が過ぎ、四年目に入ってようやく重い腰を上げてきちんと調べることにした。コスモ石油が家のまわりに売りに来るのは何曜日の何時頃なのか、割高だとしてもどの程度なのか、などなど。そしたら、あなた、そしたらさ、ぜんぜん違うじゃないですか。何がってそもそもの話がさ。

あれは、灯油を買いたい人があらかじめガソリンスタンドへ頼んでおいて、後日家まで届けてもらうサービスなのだった。つまり販売トラックではなく、配達トラック。なんだよー。ポリタンクを掴んでダッシュした自分が虚しい。焼き芋買うみたいに灯油が買えるんだと思っていた。「おっちゃん、灯油、ちょうだい」「まいどっ。百ミリリットルおまけね」「ありがとう」みたいな牧歌的な会話をここ数年思い描いていたのに。しかも改めて調べてみるとどこのガソリンスタンドも配達エリアがどうの、二缶からでないとどうのと条件があって、どうも私は買えそうにない。がっかりだ。

灯油ストーブがこの歳になるまで身近でなかったので、そういったシステムを理解していなかったのだった。最近そういうことが多い。先日までタタミイワシは一匹が五センチくらいあると思っていたし、こないだなんかスポーツに興味がなさすぎて「スポーツ競技場」という言葉が出てこなかった。偶然獲得しなかった当たり前の知識知見が山のようにあって、そのほとんどを知らないまま一生を終えるんだろうなと思う。

※大方書き終えてからもう一度調べたところ、灯油の巡回販売も存在しているらしい。もうわかんないよ。でも近所でそれらしいトラックの気配を感じたことはないからやっぱりだめなんじゃないかしら。