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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

グミの聖地はボンにある

グミが好きか

グミが好きか?これはあなたへの質問ではない、私の魂に問うている。グミを愛しているか?答えはイエスだ。いつからか覚えていないほど昔から、私はグミが好きだ。

 

赤橙黄緑青紫の鮮やかな粒。ゼラチンを原材料とすることで獲得した、動植物でも道具でもどんな形にもなれる自由さ。それ自体が発光しているかのように半透明の体からこぼれる光が好きだ。

 

色のバリエーションはそのままフレーバーの多様さを意味する。イチゴ、リンゴ、オレンジのような果物を目指したものから、コーラやソーダといった人工的な味をさらに真似た複雑なものまで。味付けはほとんど砂糖と香料で、人類が人類のためにわざわざ作り出した香りなのだから、おいしいに決まっている。

 

弾力は魅力を語る上で欠かせない。酒好きに甘党と辛党があるように、グミ好きにも柔党と固党が存在する。私は完全な後者で、グミは固ければ固いほどいいと思っている。
グミを口蓋と舌で押しつぶして抵抗をしばし楽しんだあと、ゆっくりと歯を立てる時の感触が好きだ。口の中でグミがきらきらした数十の破片に砕けていく様子を想像するだけでうっとりしてしまう。一心に咀嚼していると、顎の付け根から唾液とともにじわっと喜びが湧いてくる。無限のリズム運動がセロトニンの分泌を促すのかもしれない。

 

グミ好きの引け目

どうもグミには依存性があるようで、前の職場でストレスが溜まっていた頃は毎日のようにひと袋消費していた。大人がどぎつい色のお菓子に夢中になっているのは少々見苦しいけれど、気軽なうさ晴らしだったのだ。

 

私があまりにもグミばかり食べるのでその時の上司に「口唇期が終わってないんじゃない」とからかわれたことがある。口唇期とはフロイトが提唱した人間の発達段階のうち、授乳期の赤ちゃんが口から快楽を得る段階のことだ。この段階で欲求の満たし方に過不足があるとその後の人格発達に影響があるとされている。

 

上司の発言は言い換えると「おしゃぶり離れができてないんじゃないのか」ということで、これはもしかすると図星なのかもしれず、けっこうショックだった(ちなみにその上司はしょっちゅう煙草を吸う人だったので「喫煙者にだけは言われたくない」と思った、実際言った)。

 

結局のところグミは嗜好品だ。あらゆる嗜癖につきものの引け目を、グミ好きも持っている。しかし自覚したところで好きなものはなかなかやめられない。今だって気合を入れて仕事をする時などはやっぱりかたわらにグミがないと寂しい。

 

ところでドイツに行きました

ここでようやく本題に近づくが、先日ドイツへ旅行に行った。明確な目的があったわけではない。同行者が行こうと行ったから、ドイツに住む友人が何人かいたから、たまたま時間に恵まれたから、とその程度だ。事前の知識はあまりなかった。

 

ドイツといえばなんだろう。ある人にとってはビール、ソーセージ、ジャガイモかもしれない。また自動車や、サッカーを挙げる人もいるかもしれない。
私にとってドイツといえばグミである。そう、グミは1922年にドイツのボンで発明された(公式サイト)。生みの親の名前はハンス・リーゲル、あの有名なハリボー社の創業者だ。

 

ボンにはハリボー社直営のアウトレットショップがある。訪れる都市のひとつはボン、と早々に決まった。同行者が会う予定の知人がボン在住だったのは幸いだった。

 

バスでボンに到着

ボンは昔西ドイツの首都だったそうだけれど、想像よりはこじんまりとしていた。長距離バスで日曜日に到着したせいか道路はがらんとして余計に広く見える。1日めはもうひとつの目当てであるケーニヒ・ミュージアムという自然史博物館に行った。まわりには同じような大きくて古い、堅牢なつくりの美術館や博物館が並んでいて、すぐそばにはライン川が流れていた。

 

展示を見終えて電車で数駅移動した。今夜の宿はボン中心部から6キロほど離れた住宅街の中にある。ハリボーのアウトレットショップもその徒歩圏内だ。万事抜かりなしである。

 

宿の最寄り駅周辺は地味な商店街で、いかにも郊外都市の風情だった。小さなお城があるものの観光名所という雰囲気ではない。しかし駅前で大体の物が買えてかつハリボーのアウトレットショップがある街、こんなうらやましい立地があるだろうか。私の家の近くにはコンビニもスーパーも図書館もあって便利だけれど、グミの専門店はない。

 


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宿の近くで見かけたハリボー・トラック。胸が高鳴る。

 

これがアウトレットショップだ

次の日の午前中、いよいよハリボーのアウトレットショップに向かった。「学生時代、友達の家に行く時よく通ったよね」という謎の偽記憶が想起される平凡な住宅街を通り抜けていくと、それは現れた。

 


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これがハリボー社直営のアウトレットショップだ。ヒャホー!

 


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パッケージでよく見るハリボーベア。もちろんこの後ツーショットを撮った。

 


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店内はとにかく広い。国道沿いの業務スーパーくらいの広さと言えば想像しやすいだろうか。業務スーパーにはありとあらゆる食材があるが、この店にはハリボーのグミしかない!

 

量り売りコーナーがある

日本で見たことのないグミが何十種類も無造作に積まれていてあわや破産、スーツケースがグミで埋まるかと思ったが、うまいことに量り売りコーナーがあった。

 


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備え付けの袋(でかい)にグミを詰めてレジに持っていくと、重さを量って値段を計算してくれる形式である。一応コーナーのそばにも秤が置いてある。

 

しかもグミの種類にかかわらず1キログラム5.90ユーロ(約720円)とべらぼうに安い。日本だとたとえば定番のゴールドベアで100グラム230円するので、ざっと3分の1のお値段だ。
つまり好きなだけ店内の気になるグミを買って試せるのだ……。

 

興奮しすぎて過呼吸になりそうになってきた。紙袋を口に当てて呼吸を整えつつ、ここからその一部を紹介する。商品名のカッコ内は私が適当につけたものだ。

 

グミの紹介



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Goldbären Limited Edition(限定版ゴールドベア)
ど定番のゴールドベアだが、その夏限定版。スイカとかドラゴンフルーツとかの味になっている。


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Ingwer Zitrone(ジンジャーレモン)
絶対おいしいと思って買った。絶対おいしい。

 


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Phantasia(ファンタジア)
キモいおっさんの妖精、おしゃぶり、魔法の杖、恐竜、羽の生えた豚、ドワーフ、ジュースの瓶などなどの狂った組み合わせ。おそらくファンタジー世界を表現したもので、ドイツのおとぎ話が元ネタになってるんだろうけど詳細不明。

 


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Quaxi
リアルなカエル型。これおいしいよね!大好き!今回の旅でもお世話になった友人からお土産でもらって知った。
日本のPLAZAなどでも時々見かけるが末端価格にして400円はくだらない代物で、0.85ユーロ(約104円)は破格である。
青りんご味の体+カエルらしさを引き立てるお腹側のマシュマロ。口の中でカエルを冬眠させている気分を味わえる。ドイツ人はグミの天才。大きなプラケース入りのを買った。

 


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Kinder Schnuller(おしゃぶり)
グミなんかおしゃぶりみたいなもん(暴論)なのにわざわざおしゃぶり型のグミを作るという皮肉。グミへの批判的精神が感じられる。

 


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Vulkano(火山)
これすごいの、中にマグマに見立てた赤くてすっぱいジュレが入ってるんだよ!芸が細かい!

 


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Crazy Python(クレイジーパイソン)
ただのパイソンではないクレイジーパイソンである。カエルと同じくお腹がマシュマロでできている。グミって両生類とか爬虫類向きなんですね。

 


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Rock Show(ロックショー)
ギター、ベース、キーボードなどロックバンドの楽器の形。今更言うことでもないけどほんとになんでもグミにするなあ。

 


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Saure Apfelringe(すっぱいアップルリング)
すっぱいグミが好き、青りんご味が好き。ドーナツも好き。つまり最強。

 


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BÄRCHEN PÄRCHEN(ペア・ベア)
2つのフレーバーがくっついたクマのグミ。勝手にロマンを感じてしまい、ドリフト・ベアと呼んでいる(パシフィック・リムが由来)。

 


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Vampire(吸血鬼)
コウモリ型。翼はいろいろな味と色があって、体は黒くてリコリス味。リコリス味私はわりと好きなんだけど、人によっては苦手だろう。よく見るとコウモリの翼や顔も作り込まれててかわいい。

 


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Kirsch Cola(チェリーコーラ)
コーラの瓶にさくらんぼがあしらわれている。味はそのままチェリーコーラ。「ゼラチン不使用」とのことなんだけど、どうやって固めてるんだろう。たしかにふつうのグミのような弾力がなくて、むっちりした歯ざわり。歯にくっつきやすい。

 


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Halbmond(三日月)
これもゼラチン不使用。けっこう渋い顔をしている。安部公房の「笑う月」を連想する。

 


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Weisse Mäuse(白ネズミ)
全身がフカフカのマシュマロでできたネズミ型のグミ!かわいい。悟空が恩人のネズミを口の中にかくまうシーンを再現したい人はこれ。

 


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Orangina(オランジーナ)
フランクフルトの友人夫婦がくれたもので、アウトレットショップには売ってない。フランス限定らしい。ご当地ハリボー!レア物だ!パッケージのキャッチフレーズも”Haribo, c’est beau la vie...pour les grands et les petits!”とフランス語になっている。

 


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Goldbären(ゴールドベアの色別売り)
1キロ単位で色別にされたゴールドベアが売られていた。いいなー。私は緑と赤が好きなんだけど、こういうのは色が混ざっているから楽しいんだろうなと思って買わなかった。

 


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アーノルド・シュワルツェネッガー
変わり種としてこんなのも。非売品で展示のみ。シュワルツネッガー本人からの手紙に「これまで絵に描かれたり彫刻にされたりしたことはあったけれど、グミになったことはなかったと思います」と書かれていてそりゃそうだろうなという感じである。

 


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Gummi Gaudi(グミガウディ)
おみやげにぴったりな小さな個包装の詰め合わせ。ちょっとした枕くらいのサイズ。Gaudiってサグラダ・ファミリアのガウディか?なかなか言うやんけと思ったが、調べたらバイエルン方言で大喜び!みたいな意味があるらしい。

 

以下はソフトキャンディ部門。

 


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Balla Stixx
棒状のソフトキャンディ。スーパーで売ってた細いバージョンの青りんご味を食べたけどおいしかった。
固めで無味のチューブの中に、トロッとやわらかめの白いソフトキャンディが詰まっている。なかなか止まらなくなる。

 


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Blumen Zauber(花のマジック)
金太郎飴っぽいソフトキャンディ。

 


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(不明)
メモするの忘れた…。めちゃくちゃ不思議な味がする糖衣のソフトキャンディ。
最初に芳香剤みたいな香りがして、甘酸っぱい味に変わり、最後に麦芽糖のような余韻がある。あとこれは湿気て色が変わっちゃったみたいで、本当はもう少し鮮やかな紫。

 


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Cola Kracher(コーラクラッカー)
コーラ味のソフトキャンディにうすーい糖衣がかかっている。日本のコーラ味とほぼ同じだけど、少しだけドクターペッパーのようなハーブ風味。

 


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MAOAM Sour Bloxx
マオアムでいいのかな?MAOAMはソフトキャンディのシリーズで、これはBloxxと呼ばれる直方体のもの、かつリンゴやイチゴといったすっぱい味ばかり集めたパック。1本4個入り×5入っている。ハイチュウっぽいけどもっとガシガシしてて固め。これはこれでおいしい。


ハアハアハア…読むの疲れたでしょう?でも買わなかった商品もまだまだたくさんある。ハリボーは幅広い。

 

まだまだあるぞハリボーグッズ

あとこれは日本で手に入らないだろうなと思ったのは、ノベルティグッズ。

 


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旧デザインのグミベアをあしらったレトロ缶

めっちゃかわいい…かさばると思って買わなかったけど買えばよかった。かわいい~。

 


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ゴールドベアのキーホルダー

赤、オレンジ、ピンク、白、青、緑、黄色とカラーバリエーション豊富。私は一番好きな緑のを買った。マグネットとピンズもあった。

 


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ペラペラのバッグ

かわいい。買ったけど絶妙に縦長で何を入れるべきか悩んでいる。

 


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でかいノート

小学生だったら絶対買ってた。

 

これ以外にもエコバッグ、キャップ、ペン、ハリボーベアのぬいぐるみなどたくさんあった。

 


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ノベルティじゃないけど気になったのはこの巨大ハリボーベア。コインを入れたら動くのかな。子どもが乗れるタイプの機械仕掛けの遊具もあった。

 

アウトレットショップ、めちゃくちゃ楽しい…。重い荷物を背負ってるの忘れて店の中をぐるぐるぐるまわってしまう。

 

”Haribo macht Kinder froh... und Erwachsene ebenso!”

ところで楽しいという以上に、ぐっときたコーナーがあった。ハリボーのTVコマーシャルを流し続けるテレビである。下はそこで見たCMの一部。

 

www.youtube.com

ドイツ語がわからないので細かい設定は不明だが、落ち込んでいる男の人がハリボーをもらって元気元気!やったー!よかったね!みたいな内容である。

 

www.youtube.com

こちらは昔のCM。アニメーションと、子供と大人による歌がかわいらしい。

 

他にもYouTubeで見つけられなかったけれど、「ハリボーを持つ男の人のところに子どもたちがやってくる。ひとりじめにしたい男の人はとっさにハリボーを隠すのだが…」というストーリーのCMもあった。

 

CMの最後にかかる歌の文句は”Haribo macht Kinder froh... und Erwachsene ebenso!”。「ハリボーは子供を幸せにする、そして大人も」という意味だ。ハリボー社がずっと使い続けているキャッチフレーズである。

 

前述の公式サイト によれば、1930年代当初は「ハリボーは子供を幸せにする」までだったそうだ。1960年代のテレビコマーシャルで初めて「そしても大人も」の部分が加わった。それだけグミの好きな大人が多かったんだろう。

 

このフレーズ自体はパッケージに書いてあるので、以前から知っていた。でも遠く離れたここボンで、グミの生まれた地で、全力でグミが好きなことを肯定されるのは、また違った感慨があった。

 

実際その時店にいるのは大人ばかりだった。みんな嬉しそうで、どことなくはしゃいでいた。大きな体をしたおじさんが、量り売りコーナーにしゃがみこんで次から次へ袋にグミを放り込んでいた。”3kg”と記された恐るべきダンボール箱をいくつもショッピングカートに積んでいる女の人もいた。ベリーショートの女の人は棚をのぞき込みながら、鼻歌まで歌っていた。

 

こうしてグミの聖地で、孤独なグミ好きの魂は救われたのである…というのは言い過ぎだけど、来られて本当によかったなと思った。

 

グミ、好きですか?今度は長い文章をここまで読んでくれた人に聞きたい。
いいよね、おいしいよね、グミ。グミで強靭な歯と顎を鍛えて、この世の悲しいことや苦しいことを咀嚼していきましょう。アウトレットショップも行ってみてね。歯と嚥下能力がないとグミ食べられないから、健康に気をつけて、元気でね。

 

おまけ①BEARS & FRIENDS

ハリボーの回し者みたいな文章を6000文字以上も綴ってしまったけど、ドイツにはBEARS & FRIENDSというグミ専門店もある。大きめの都市でよく見かけた。こちらも紹介しておこう。


ハリボーよりデザインが丁寧で落ち着いている印象で、自転車のやつとか海モチーフの灯台やロブスターが入ったやつとかめちゃくちゃかわいい。

shop.bears-friends.de

 


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これは以前お土産にもらった脳グミ。脳ですよ。この表面のシワ!しかもミソとして、内側にトロリとしたベリー系のジュレが入っているというこだわりぶり。ドイツ人は万象一切をグミにしようとしているのだろうか。

 

おまけ②歯磨き粉も買った


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グミへの愛をいっそう深めた旅だったが、グミを愛し続けるためにもっとも退けねばならない敵は何か、そう虫歯である。ということで歯磨き粉も買った。フッ素がいっぱい入ったやつと、ホワイトニングができるやつ。どこの国に行ってもドラッグストアって最高に楽しいですね、その国の人が何を大切にしているかがそこに見て取れる気がする。