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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

点取日記 10 遺失物取扱所

もうすぐ引っ越しなので部屋の物を片付けていた。

持っていくものを選り分けるついでに要らない物をガンガン捨てている。10年ほど前から漬けたままになっている枇杷仁酒も捨てた。思いつきだけで漬けてうすぼけた味になった梨酒も捨てた。たくさんもらった柚子の始末に困って漬けたユズンチェッロ(リモンチェッロの柚子バージョン)も捨てた。

 

そう、私はやたらと果実酒を漬けている。なぜ今になって捨てる羽目になったかと言うとアルコールに弱くてほとんど飲めないからだ。あなたはこれから一生飲酒できませんよと言われても特段困らない。

なら果実酒なんか作るなよと糾弾されそうだ。実際その通りだが、そう言われたら私の答えは「だって果実酒作るの楽しいねんもん」である。

 

果実酒作りは楽しい。果実酒だけでなく干し肉もジャムの瓶詰めもアンチョビも、長期保存食を作るのはとても楽しい。できたものを消費しきるまで生きている保証もないくせに、作ると心がどっしりと安定するのだ。そういう人は多いのではないかと思う。

 

それにしてもどうして作る前に自分が酒に弱いことを思い出せなかったのだろう。厳密にいうと思い出せなかったのではなくて、保存食作り欲がむくむくと湧いてくると「夕食後にコップに半杯ずつ飲めばすぐなくなるよ」「この果実酒は昔喉の薬だったそうだ」「飲まなくても料理の風味付けに使えばいい」などのささやきが下戸という事実を押し流してしまうのだ。

 

さすがにここ数年はそういうことも少なくなり、古株の果実酒の瓶ばかりがじっと飲まれるのも待っている状態が続いていた。(と言いつつ、調べ直したらユズンチェッロはつい3年前のものだった。アホなのだろうか?)

引っ越し先に持っていくのは友達と一緒に漬けた梅酒だけにするつもりだ。

 

果実酒の話ばかりしてしまったけれど片付け作業は一事が万事この調子で、「こうなりたかった自分」がザクザクと発掘されて神経にこたえる。しかもたいてい「こうなりたかった」ことすら忘れているから懐かしいというより、ただ戸惑うばかりだ。

使いこなせない万年筆やきれいすぎて使っていない文鎮、勢いで買ったブローチ、全部処分してしまおうかと思ったが、でもいっそこういう物ばかり連れて行くのがいいのかもしれない。生活感なんて後からいくらでもついてくるのだし。

 

ちなみに机の引き出しの奥からは高校生の頃から数年間使っていたHOLGAというトイカメラが出てきて、箱には現像前のフィルムも3本入っていた。現像代がそこそこかかるため、お金が貯まったらと思ってそのままになったのだろう。

トイカメラは当時ヴィレッジヴァンガードなどの雑貨店で大量に売りさばかれていて、サブカルあるあるみたいな感じで馬鹿にされていたけれど、あのぼけた仕上がりは10代の自分の感覚と妙にマッチして、私はやっぱり好きだった。

フィルムは劣化するのであまり期待できないが、安いネットサービスを探して現像してもらおうかと思っている。あああ、どうってことないものしか撮ってないんだろうなあ。

 

 
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「なくした物が出てきた時はほんとうに嬉しい 9点」

 

点取占いはたまに天才的な引きを見せる。

なくしたのかな。ずっと忘れてたし、ずっと部屋にあったんだけど、なくしてたのかもしれない。