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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

点取日記 7 正しい桃の殺し方

少し見た目の悪い桃を安くで手に入れた。

肌にぽつぽつとあばたがあるだけで安くされてしまうなんて桃と桃農家の人には気の毒だけど私にとっては嬉しいことだ。

 

家に帰ってさっそくひとつ食べようとして思い出した。「桃の湯むき」だ。桃を熱湯に30秒ほどくぐらせて氷水で冷やすと面白いくらい簡単に皮がむけるのだという。

一度にたくさん桃をむく時の裏技らしいけれど、こういうのは趣味なので実験してみることにした。

 

お鍋にお湯をぼんぼん沸かしてお玉でそっと桃を浮かべる。

お鍋が浅かったのでお玉でお湯をすくってばしゃばしゃかけてやり(話が逸れるけどレシピで食材に対して「泥を落としてやる」とか「酢水にさらしてやる」とか恩着せがましい表現をするのは何目線なのだろうか)、30秒で引き上げて氷水を張ったボウルに放り込んだ。

見かけは少し赤が濃くなったかな、程度であまり変らない。

 

お皿に移してお尻の割れ目から中心の種までナイフで切り込みを入れる。皮をつまんだら桃の重みだけでスルスルとむけていった。面白い。「面白いほど簡単に桃がむける方法」を試して面白いと感じるのはバカみたいだが、面白い。

何度か細くむいた後、面倒になってちょっと広めに皮をつかんだらそのまま全体の半分ほどがぺろんと脱げてしまった。丸のままの桃が裸になりました、という趣でお皿にでんと座っている。

 

あとはすでに入れた切り込みと平行にナイフを入れれば、くし形の果肉がぽんぽん取れる。切っては食べ切っては食べしていたら桃はあっという間になくなった。

お湯や氷水の準備があるので桃ひとつにやるにはやはり大仰だけれど、果汁もほとんどこぼれないしいい方法だと思う。

少しばかりこぼれた果汁もお皿をかたむけて飲んでしまった。

 

満足してお皿を見たらおかしかった。残っているのはごく薄い桃の皮と、ぎりぎりまで果肉を削がれたしわしわの桃の種だけだ。いつもはナイフで皮をむくし、種には果肉が多少残るし、下手くそだと実が潰れて果汁があちこちに垂れるのでこうはならない。

 

果肉だけどこかへ消え失せたようだ。桃の皮で連想するのは、退治され塵と化した吸血鬼が遺すマント。そうすると桃の種は白骨だろうか。「ボディを透明にする」という実在の殺人犯の言葉を思い出した。皮と種さえどうにかすれば、家族は私が桃をまるごとひとつ独り占めにしたなど思いもしないかもしれない。

 

お皿やナイフを洗ってふと桃を煮たお鍋を見ると、お湯の表面がもやもやとけぶっていて、何かと思ったら桃の産毛がたくさん浮いているのだった。第三の証拠品だ。おっと油断大敵だぜ、とやましい気持ちで私はお湯をシンクの排水口へ隠滅し、かくして完全犯罪が成立したのである。

 

 
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「競争すれば僕が勝にきまっている 5点」

 

昨日は「私にたのみたい事がありますか」と言ってくれたのに今日は勝ち誇られてしまった。

 

私はこの点取占いにすごくキュンとしたんだけど、点数が5点なのだ。

勝(つ)にきまっている、と断言しつつ、勝負はあくまでも五分五分。

フェアプレーの精神を感じる。占いに対する点数の設定も見逃せないですね。