点取日記 3 丸くて赤い
仕事で必要があって図書館でバレーボールに関する本や雑誌をたくさん読んだ。
バレーボールのことはよく知らない。学校の授業でやったはずだが、基本的なルールすら覚えていない。
覚えているのは授業のあと腕が真っ赤に腫れ上がったことだけだ。
こういう時はまっすぐ児童書コーナーに向かうのがいい。野菜の育て方でも偉人の生涯でも下水処理の仕組みでも、たいていわかりやすい本が置いてあるからだ。
バレーボールについての本は2冊あった。
ところが、どちらの本も「スパイクを成功させるには姿勢をどうすればいいか」とか「強豪校の部活練習メニュー徹底解説」みたいな内容で、初歩的なルールや用語が載っていない。
こちらはリベロとかオポとかディグがわからなくて困っているのだ、なんだったらサーブレシーブトスアタックそれぞれの動きすら曖昧なのだ、手を抜かないでほしい。
みんなバレーボールのルールをどこで習うのだろう。
中学か高校の(それすら記憶が定かでない)バレーボールの授業で私もルール説明を受けたはずだが、たぶんまったく理解できていなかったと思う。
女子バレーボール部だったサカグチさん(仮名)はボールがユッコからみーやん、まりすけへと移動し、敵陣に叩きつけられるまでの道筋を頭の中で1本の線につなげられるのだろうが、私からすると視界にボールが現れ、衝撃と痛みがあり、ボールがあさってに飛んで視界から消えるというだけのことだから、ゲーム性もくそもないのだ。
バレーボールの雑誌を読むと選手たちの笑顔の写真がいっぱい載っていて、吹き出しに「バレーボールは仲間と1つのプレーをつなぐから好き!」とか「ボールに一瞬しか触れないからこそ次の人のことを考える」などと書かれていた。
そうだったのか。
バレーボールって。
そういう競技だったのか……。
自我なさすぎ中学生だった私が当時何をしていたのか思い返してみると、放課後の放送室で友達とだべりながら、マイクスタンドの棒でひたすらダンボール箱を殴って充足感を得ていた。
仕事できるだろうか。不安になってきた。
帰りにスーパーですももを買った。ついつい買い逃していたので、今年初だ。
家の台所でちゃちゃっと洗ってかじったら、汁がぼたぼた流しに垂れた。
丸い。赤い。すっぱい。うまい。優勝。
なんてわかりやすいんだ。すももはえらい。えらいなあ。
「おみこしをかついだ事がありますか 6点」
絵がかわいい。
おみこしかついだ事ないな。
私の育ったマンションはできたばかりだったせいか地域の祭事からなんとなくハブられていて、古いお祭りとは縁遠かった。(マンションの子供会の祭りは別にあった)
夏休みに祖父母の家に行ったらなぜかはっぴが用意されていて、村のこどもみこしをかつがせてもらったことはある。
嬉しかったけど特に思い入れとかはなかったし、かつがれた神様も誰やねんという感じだろうと思う。そういう意味で私はおみこしをかついだことがない。
地元のお祭りにすさまじい思い入れがある人って、私には今ひとつ理解できないけど、きっと友達や地元の人や、その土地の信仰と一体になる気持ちがしてとても楽しいのだろうな。
バレーボールとは……おみこしとは……。