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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

殺意味の飴

毎日の楽しみにしている飴があって、名前を桜間見屋の肉桂玉という。岐阜県郡上八幡に旅行へ行った時出会った。銭湯で試食コーナーにあったのをひとつ口に放り込んでお風呂に入り、湯から上がる頃にはその味がすっかり気に入って、ひと袋買って帰ったのが始まりだ。
 

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肉桂玉は甘みがやさしく、とてもからい。正直言って万人受けする飴とは言えない。実際友人に配ってみたが半分以上はからすぎるという反応だった。私はこの飴を知るまで肉桂とシナモンはほぼ同じ味だと思っていた。微妙に違うのだ。シナモンは強く丸みのある香りがして、味はない。肉桂はさわやかな香りの他にビリビリと舌を刺す刺激がある。
 
初めて肉桂玉を食べた時「小動物から殺意を向けられているような味」だと思った。これまでに食べたニッキ飴とは一線を画すからさで、明確に「お前を殺す」という攻撃の意思を感じる。ただしその身はとても小さいのでせいぜい舌に噛みつくくらいしかできない。かわいいものだ。指の腹にアゴを立てる蟻や、つぶらな瞳のハムスターが全身の毛を逆立てて威嚇している姿を想像する。
 
旅行から帰っても私は毎日飽きずに食べて、とうとう肉桂玉はなくなってしまった。悲しかった。あの殺意が恋しい。インターネットで検索すると岐阜や名古屋の土産物店、またはFAX通販でないと買えない。もしくはAmazonで10袋入りというめちゃくちゃな単位でしか売っていない。
 
結局、その後偶然にも京都河原町の髙島屋で見つけることができた。地方の銘菓みたいなコーナーで売られていたのだ。嬉しくて、せっかくだからふつうの肉桂玉と黒肉桂という黒糖ベースの肉桂玉をひと袋ずつ買った。それから毎朝ひと粒ずつ、仕事へ出かける前に食べている。
 
今食べているのは最初に買ったのと同じふつうの肉桂玉なのだが、不思議なことにからさにばらつきがあるようだ。最初に食べた時はどの飴も殺意換算でいうとハムスター大だったのだが、昨日食べたのはカヤネズミ大だったし、今日はイタチ大だった。舌がギューッと絞り上げられるように痛み、嬉しくてほくほくした。これはこれでくじ引きのような楽しみがある。  肉桂玉のシリーズには、私が食べた「肉桂玉」「黒肉桂」のほかに、玄人向けの「特辛」があるらしい。殺意でいうとどれくらいだろうか。ネコ大までならなんとか耐えられる気がする。いつか食べたい。