山のキノコ、自然の箱庭
ひらがなとカタカナと漢字の表記がごちゃまぜになっているもののひとつにキノコがあって、それぞれ言葉の感触が違う。「きのこ」は食またはメルヘンで「キノコ」は生物的、「茸」も食だけど網焼きか炊き込みご飯以外はご遠慮します、という気概を感じる。
私は断然「キノコ」表記派です。道を歩いているときにニュッと生えたキノコに出くわすと、嬉しいと同時にとても不可解な気持ちになる。出会ったことはないけれど、キノコにいちばん近いものは妖怪だと思う。
不可解な気持ちになるためにこないだ山へ行った。週半ばに雨が降ったあとの土曜日、キノコ狩りにはうってつけの日だった。歩きやすいよう整備されたふもとの道でもたくさんキノコを見つけることができる。
話が飛ぶのだけれど、小学校の時、給食のコッペパンを割って断面の穴を見るのが好きだった。見るというよりもぐりこんで探検するのが好きだったと言った方がいい。パン以外を見ないよう集中していると穴はだんだん大きくなり、私はやわらかくていい匂いのほら穴を自由にぶらつくことができて、すごく満ち足りた気分になった。
キノコを眺めるときの気分はそれとよく似ている。没入できる箱庭が頭の中に立ち上がる感覚だ。別に山のどこでだってできそうな気がするけれど、キノコというのは不思議と別世界の起点に向いているみたいに思う。
キノコの紹介
山で写真をたくさん撮ってきたので、なかでも没入感の高かったキノコをいくつか挙げます。
崖に群生していたニガクリタケ。毒キノコです。
試しにかじってみたらその名の通り、苦くてまずくてすぐ吐き出してしまった。少しスースーした気もする。
日向に生えたシロヒメホウキタケは光る樹のようだった。名前が可憐ですね。
伐採された木の置き場で見つけたキノコの祠。超カッコイイ。
ちょっとこれは、周りの落ち葉と見比べてその巨大さを測ってほしい。見つけたとき思わず奇声をあげて駆け寄った。ドクツルタケに似ているけど、ツボの大きさに疑問が残る。
上から下から生えてくる、キノコ合戦関ヶ原。
これはキノコじゃないけど、いい感じのコケです。昼寝したいなあ。