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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

点取日記 28 カシミヤの手袋

謹賀新年。年末から実家に帰って以降祖父母の家を訪問した以外はだらだらと過ごしている。ここ数年、風邪やインフルエンザで年末年始の休みをふいにする年が続いていたが、今年は健康そのものだ。

 

健康体は暇である。猫と遊んだり、昼寝をしたり、昔の絵本を読み返したり、微妙な映画を見て微妙な気分になったり、ごちそうの残りをかじったり、ごちそうで荒れた胃を白湯でなぐさめたり。

初売りには全然興味がないし初詣は気が向いたら行く派なので、初夢を見るくらいしか正月らしいイベントがない。今年の初夢は「魔法学園の狭苦しい寮の二段ベッドで折り重なるように寝ていたら悪魔が攻めてきて、ネコ科動物に变化した悪魔と戦う」だった。

 

みんなもそろそろお正月に飽きてるんじゃない? ろくでもない初夢から覚めたあと、そう思ってTwitterを更新すると平和で緩慢な空気に満ちていた。しっかりしてくれ私の精鋭たちよ、いつものキレのあるツイートはどうしたんだ。

結局お正月休みと退屈は裏表で、退屈を持て余してぼんやり過ごしてしまうことも含めてお正月休みなのであり、そういう種類の楽しさなのだな、とぼんやり思う。

 

そのようにひとつの文に二度「ぼんやり」と書いてしまうくらいぼんやり過ごしていたが、今日は有意義なことでもするか、暇だし。と思って手袋を繕った。とても気に入っているカシミヤの手袋だ。肌触りがよくて温かくスマホ対応。自転車に乗る時は必ず着けていたが、ハンドルに体重をかけてグッと握り込むせいで中指の先が両方とも破けてしまっていた。

 

近所の百均で買った修繕セットには黒、紺、グレーの小さな布切れが1枚ずつ入っていた。生地の片側にきらきらと光沢があり、アイロンの熱でくっつく糊が付いているらしい。先にアイロンのスイッチを入れておいて両の手袋を裏返す。左の手袋を裏返すと右手にぴったりと、右の手袋を裏返すと左手にぴったりとはまった。私のふたつの手は、節くれだった第二関節も爪の大きさも本当によく似ている。

 

穴に合わせて切った補修布を手袋の中指に乗せ、アイロンを取る。プレスする前に邪魔にならないよう他の指を折り曲げたら、アッと思った。ひと揃いの手袋がゆうゆうと中指を突き立てていた。お正月には少々不謹慎な光景だ。ちょっと愉快だと思った。ふぁっくゆー。

 


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「けんかに勝ってもじまんするな 4点」

やるか? かかってこい。