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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

点取日記 8 平坦への道

人見知りのわりに仕事で初対面の人と話す機会がそこそこ多い。

これまで会った人の中には絵本が大好きな3歳の男の子もいれば、手先が器用な94歳のおばあちゃんもいたし、他にも農業高校の女の子とか、作業所でクッキー作りをしている青年とか、医療系の会社を起業して数十年で大きくしたおじさんとか、本当にさまざまだ。

 

長くもない経験なりにそういう場面で気をつけていることがいくつかある。その人の好きなものや長年続けてきたものには敬意を払うこと、なるべく事前に勉強して共通言語をつくること、でも付け焼き刃だと忘れないようにすること、などなど。

そうやって短時間で相手に共感しつつ心をフラットな状態に保つのも大事だと思っているのだけれど、今日それが揺るがされることがあった。しかもものすごくしょうもない理由だ。

 

訪問先の人に「じゃあうちのイケメン枠呼んできますんで!」と言われて出てきたのが、本当に滅多に見ないくらいの、ピカピカの美青年だったのである。

美青年と話し始めて数分経った頃、自分の額に汗が浮いてきているのに気がついた。会話自体もしづらく、予習してきた情報でキャッチボールは途切れないものの、なんだか自動操縦モードになった自分を内側から見ているみたいでぎこちない。もしかして“あがっている”のか? 私が? 

 

それまでもともとない社会性をエンジン全開にして数人と会話していたので息が上がってきたのかとも思ったが、この場から逃げ出したいという気持ちがどうにも治まらない。

フラットフラットフラット……と心の中で唱えながら結局、最低限の質問をこなして早めに切り上げた。

 

決して外見に惑わされたのではない、その人の内側から発せられる絶対的な自信がまばゆい光となって私のコンプレックスを刺激したのだ、とかなんとか、理屈をつけて自分を納得させるのは簡単だが、おそらく事実はもっとシンプルだと思う。イケメンにあがった。以上だ。

 

夕方になってようやく帰路につき、遅い昼か早い夕食かわからないごはんを食べながら惨めな気持ちになった。忸怩たる思いとはこういうことをいうのだろう。

どんな人物に何を言われても常にフラットでいたいなんて、べつに仏の真似をしたいわけではない。仕事の間だけ、10分から1時間ほどの間だけ、そんなふりがしたいだけだ。容姿なんぞに心乱されるようではフラット道は険しい。

 

帰宅したら面白いくらいわかりやすくスイッチが切れてしまい、汗だくのままベッドに寝てスマホでやさしめの脱出ゲームをひたすら解いた。日が暮れて部屋が真っ暗になっても解き続けた。

 

脱出ゲームを好きなのは、人間が出てこないからである。

 

 
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「もしも百万円を拾ったらどうする 10点」

 

始めて満点の10点が出た。

札束の表面に「1万円」と書いて済ませる雑さが仮定のバカバカしさを引き立てている。

もし百万円拾ったら、そうね、点取占いの在庫を探す旅に出ます。