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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

ジュピター、ミールス、宇宙の味

週末、新幹線で東京に行ってきた。主な目的はコミティアだったが、これについてはまた後日書くとしてサブの目的の話をしたい。この東京行の隠れたコンセプトは「食い物の恨み晴らさでおくべきか」だった。自分ひとりしかいないから隠れも何もないのだが、「ずっと食べたいのに東京でしか食べられないものをこの際押さえておこう、なぜなら人は必ず死ぬから」ということだ。一日目、土曜日はタダシヤナギというケーキ屋さんのジュピターというケーキを食べた。


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Twitterでケーキめちゃくちゃ食べている人が言及していたケーキで、その名前、その見た目にずっと憧れていた。都立大学駅で降りて近くの百均でフォークを買った。電車の中でお店を調べたらイートインがないとわかったからだ。そこからお店までしばらく歩いた。ジュピターは最後の一個だった。危なかった。紙箱に包んでもらい、会計をして、腰を下ろして食べられそうな場所を探した。公園などはなく、近くに緑道があったのでそこへ向かった。緑道といっても道の真ん中にコンクリートの中洲みたいなのがあって、そこに妙ちきりんなカブトムシやテントウムシの姿をした遊具というかコンクリートの塊があった。


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そこに座ってジュピターを食べた。表面に丸い模様が描いてあって木星の模様に少し似ている。外側のチョコレートはフォークですくうとヌテッと重くて、舌にくっついて暗黒物質みたいだった。中身は一番下がチョコレートのスポンジケーキ、その上にチョコレートムース、真ん中には紅茶のクリームが詰まっていた。紅茶の香りがチョコレートによく溶けて、これは宇宙の真空の部分みたいだった。あっという間に食べ終わって、フォークでトレイをきれいにすくい、行儀悪いけど誰も通りがからなかったので指でチョコレートをすくいとって食べた。宇宙の味がした。

 

その日は安宿に泊まって、午前中コミティアに行き、東京駅まで戻ったついでに八重洲地下街のエリックサウスに行った。エリックサウスもTwitterでカレーめちゃくちゃ食べてる人が言及していたカレー屋だ。これでわかったと思うが私はわりとミーハーなところがある。で、ランチタイム終了のギリギリ2分前に駆け込んで「ランチまだいいですか?(いいですよね!?)」という首尾でありついた。ミールスという南インドの定食が売りで、カレー1種のレギュラーミールスとカレー2種のエリックミールスがあった。朝からスナックしか食べてなかったのと、滅多に来られる店ではなかったので2種の方にした。そしたらこれが来た。

 
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多い。完全に多い。ご飯が2種類ふた盛りされている。少食ではないと思うが大食漢ではぜんぜんないので少し怯んだ。このタイプのカレーは時々食べることがあって、いつも大きい丸から小さい丸を全部出して最初はご飯にそれぞれを少しずつかけて食べ、徐々に混ぜて最終的には全体を均等に混ぜ込んで味の変化を楽しむ。お話を作っているみたいで最近このタイプが好きなのだがこれは。一大巨編だ。だって丸がたくさんあるしご飯は2種類あってダブル主人公の様相を呈しているしその他にも豆のドーナツやら豆のおせんべいやらといったサブプロットが用意されている。私の怯みは物的量というより情報量に向けられて、造物主としてこれを回していけるかしらと思った。ご飯を平らに崩しておせんべいを砕いてまき、最初は円グラフみたいにカレーを盛り付けた。そこからは一気呵成に食べた。カレー1カレー2お惣菜お惣菜薬膳スープカレー1豆ドーナツお惣菜おからみたいなやつ薬膳スープ、恐怖の源がだんだん物的量にうつってきてほっとした。すべてのカレーと米と惣菜は渾然一体となりエントロピーが増大して混沌ができあがり、最終的に宇宙化した。


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食べ終わったあとしばらく動けず(物理的に。胃が重すぎて)じっと座っていた。駅に向かう道で意識が朦朧として脚がびりびりしびれて体調不良かと思ったが、よく考えたら満腹だった。満腹になったことがなさすぎてわからなかった。その日は晩御飯のご飯をさすがに抜いた。

こうして2日連続で宇宙の味のものを食べた。宇宙とか食べたことないからほんとは味がわからないけど、まあぜんぶ宇宙から生まれたんだし宇宙の子が宇宙の一部を食べたといっても嘘にはならないでしょう。