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蜂インザヘッド 

ものすごく考えているか、まったく考えていない

カメと一緒に育った私がすっぽんを捌いて食べる

ついに野良すっぽんを食べた

すっぽんを食べる会に参加した。すっぽん料理屋に行く会ではない。そのへんの川で捕らえたすっぽんを自分たちで調理し、すっぽん鍋を食べる会だ。この機会を得たのは「出勤日の昼休み中にすっぽんを捕らえる」という難業に加え、泥抜きや調理の工程についても、海底クラブ氏の運と根気のおかげだったと断っておきたい。

 

偶然出会ったすっぽんを捌いて食べる - 海底クラブ

※2015/11/09追記 海底クラブ氏がすっぽんの捕獲から同居、料理までを記事にしています。

私は当日、主に撮影係をしていた。この夏はすっぽん釣りに出かけても手ぶらで帰ってばかりだったので、念願が叶ってとても嬉しかった。

 


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すっぽんの捌きはかなり難航した。事前にネットで捌き方を調べてはいたものの、メンバーに経験者は一人もいない。結果として、すっぽんをかなり苦しませることになってしまった。首を落とし、血を抜き、甲羅を開いて、部位に分ける。文章にすると簡単に見えるがすっぽんも命懸けだ。実際にはすぐ首を引っ込めて自前の要塞に籠城をする。

 

一度引っ込んだ首を引っ張りだすのは、成人男性でも難しい。そしてもちろん噛みつこうとしてくる。甲羅という守りの戦略はとても有効なのだなと思った。

 


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すっぽんが動かなくなってから(というのは、いつ死んだのか・何をもって死んだと判断するのかわからないので)の作業はスムーズだった。食べられるのはエンペラと呼ばれる甲羅のフチのプルプルしたところ、頭、手足の筋肉と、心臓などの臭みや衛生面にリスクのない内臓類だ。

 


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すっぽん鍋は余計な具材をあまり入れず、調味料も最低限にとどめた。食べた感想を率直にいえば、おいしかったが、もう少し伸びしろがあったかもしれないというところだ。多少の臭みはそういうものだと思って食べていたら、途中からどんどん臭いが消えて旨味が出てきた。すっぽんの肉は炊けば炊くほどおいしくなるタイプらしい。もったいないことをしてしまった。また、部位によっては非常に臭いのキツいところがあり、鍋全体を汚染してしまった。これらの反省は、機会があるなら次回に活かしたい。

 

すっぽんを食べる会の簡単なレポートはここまでだ。

 

ところで私は長年カメと暮らしてきた

話は変わるが、私は常にカメのいる家庭で育ってきた。4歳頃に両親がミシシッピアカミミガメを2匹買ってくれたのが始まりだ。子どもの情操教育が目的だったのだろう。以降はおもに父の趣味として、カメはどんどん増えていった。

 


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20年以上が経ち、これまで迎えたカメは水棲と陸棲を合わせて10匹以上。ここ数年で少し減ってしまったものの、今でも家には4匹のカメがいる。

 

そんな環境で育ってきた私にとって、カメはそこにいて当たり前の生物だ。血を分けた兄弟とまで言うと言い過ぎだが、とかく同列に語られがちなハムスター小鳥ザリガニカブトムシ等々と比べても、別格の存在だ。どれくらい別格かと言うと、私にはカメの気持ちがわかる(と思っている)。「日光が気持ちいいな」「上に乗ってくる奴がいて不快だ」「エサを取られて腹が立つ」など、仕草を見ればおおよそ感じ取ることができる(と思っている)。

 

食べて良い/悪いのボーダーライン

そんなカメと義兄弟の私が、すっぽんを食べてもなんとも思わないかというと、もちろんなんとも思う。私は肉が大好きだから「いかなる動物も犠牲になるべきではない。草を食べて生きていきたい」とはさらさら思っていない。けれど、「世の中食うか食われるか。お前にはとっては家族でもおれにとっては今夜のおかず」と考えるほど割り切ることもできない。

 

ここのところの気まずさは、小鳥を飼っていて焼き鳥が好物という人や、ハムスターを飼っていてヌートリアが好物の人も同じだろう。ヌートリアが好物な人はあまりいなさそうですね。

 

突き詰めて考えるとなかなかに心が痛む。そこで今回、私の出した結論は「すっぽんはカメではない」だ。


すっぽんはカメではない。甲羅のフチがプルプルしていて変だし、独特の顔をしているし、昔話でのキャラクターや、やたら下ネタとの結びつきが強いのが妖怪っぽいから。「味噌煮込みうどんはうどんではない」と同じで、カテゴリのなかであまりにも突出したものは、別の一ジャンルとして認識できる。すっぽんはカメとして変なので、私の義兄弟たちとは違う生き物。「すっぽんはカメではない」。

 

カメでないなら食べても心は痛まない。初めから食材の引き出しに入れることができる。

 

クサガメ脱獄幇助事件

最後に、クサガメの脱獄を幇助したことについて書く。

夏のまだ暑い時期に、すっぽんを探しに数人で川へ行った。すっぽんは見つからなかったが、上にも述べた海底クラブ氏がそこらへんを泳いでいたとろくさいミシシッピアカミミガメクサガメを1匹ずつ捕らえた。

 

どちらも私の家で飼ったことがある種類だ。がめつくて粗野だけどなかなかかわいい連中である。クサガメの方は、今も家で元気に暮らしている。

 

しかし、海底クラブ氏は次のように言った。

「すっぽんも見つからないし、今回はクサガメ鍋にしようかな」。

 

クサガメ鍋に」「クサガメ鍋に」「クサガメ鍋に」…

 


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私は、「こいつマジ、野蛮人かよ」と思った。

そこで「臭腺があるから臭いよ」「甲羅が硬くて捌くのが大変」「ミシシッピアカミミガメ以外の種はシェアが押されている」「まだ大きくない、若いカメだよ」などと理屈を述べてクサガメの命乞いをした。ところが海底クラブ氏は一向に聞き入れない。

 

私は隙を見てクサガメを川に放した。自分のなかのペット枠が食われることに我慢ならなかったのだ。

 

クサガメは少し泳いでいったが、海底クラブ氏が呼ぶとなんとUターンをし、自ら再び捕まった。

 


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クサガメはアホなのだろうか?思い返せば、うちで飼っているクサガメも元々はそこらへんの川にいて、呼び寄せたらホイホイ近づいてきてあっさり捕まっていた。クサガメはアホなのかもしれない。

 

結局、クサガメは氏にお持ち帰りをされた。私も二度めの脱獄幇助をする気にはなれなかった。本来、狩猟のモラルに反することだからだ。アパートに持ち帰られたクサガメはその後、水槽代わりのバケツから謎の失踪をしたため鍋にはならなかったが、これは別の話だ。

 

クサガメを食べるなんてこいつマジ、野蛮人かよ」と思った時、ほんとに心からそう思った。でもその時、私も「すっぽんを食べたいな」と思っていたのだ。そして実際、今回食べてしまった。狩猟ではこのふたつの気持ちに向かい合わないといけないし、折り合いがつくことはずっとない気がしている。

 

おまけ

この文章を書くにあたってクサガメとすっぽんについて検索した。

 


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クサガメの検索画面。

 


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すっぽんの検索画面。


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 すっぽんはやっぱり食べ物だと思いました。

 


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(おわり)